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【ゲイに不寛容な国】シンガポールのお国柄【現地レポ】

LGBTQ+

大家好!一條心です。ゲイです、シンガポールに暮らして6年弱になります。突然ですが、皆さんはシンガポールに対してどのようなイメージお持ちでしょうか。マーライオン?常夏?Crazy Rich Asian?今回は、ゲイとしてシンガポールで暮らすとは、について考えます。

「ゲイに不寛容な国、シンガポールでゲイとして暮らすとは」

シンガポールってどんな国?

日本から飛行機で約7時間、赤道直下に位置そ、マレーシアから独立して50数年余りの都市国家です。人口は564万人、ざっくり3分の2ほどがシンガポール国民と永住権を持っている人、残りの3分の1が僕のような外国人ですね。下記、外務省HPのデータですが、民族比率はシンガポール人のことを指してますので、これ以外に3分の1の外国人がいることを考えると、実際は更に多様性に飛んだ国と言えますね。

1 面積 約720平方キロメートル(東京23区と同程度)
2 人口 約564万人(うちシンガポール人・永住者は399万人)
3 民族 中華系74%,マレー系14%,インド系9%
4 国語はマレー語。公用語として英語,中国語,マレー語,タミール語。
5 仏教,イスラム教,キリスト教,道教,ヒンズー教 (外務省HPより)

実際にシンガポールで暮らした僕の感想は、とにかく「政府が強い」。政府による徹底した国家統制経済最優先の超合理的な判断基準と民族間の争いを起こさないための詳細なルール整備などなど、都市国家として生き残る為に考えられる限りのことを、とことん実践している国です。国家発展が至上命題であり、そのためメディアもほぼ政府系しか存在せず言語統制もあります。基本的に国民もそこに住む外国人も、政府が定めたルールに従って下さい(しかもそこに住める外国人は政府が国家に役立つ人だけを選別します、というスタンス)。従いたくない人はどうぞ出ていって下さい、来てくれなくて結構です。という先進的なイメージとは裏腹で、かなり強権な、お国柄です。

宗教的背景

シンガポールの宗教構成比は、ざっくり仏教3割、キリスト教2割弱、イスラム教2割弱、ヒンディー教0.5割程度になっています。多民族国家のシンガポールでは憲法で宗教の自由が認められています。これは、イスラム教を国教とするマレーシアや、イスラム法(シャリア)を基本法とし宗教指導者が統治する中東の国々などとは異なる制度で、それぞれの宗教間の衝突が起きないように様々なルールが詳細に定められています。祝日もそれぞれの宗教に配慮し、それぞれの宗教にとって重要な日をバランス良く祝日として配置されています。多民族国家であればあるほど、それぞれのコミュニティ内での宗教色は強くなります。本来、同性愛者の権利の制限は人権問題であって、宗教に基づく伝統的な価値観とは切り離して議論されるべきではあります。しかし、シンガポールでは宗教間の摩擦を避けるために、お互いの宗教について公に議論すること自体が推奨されていませんので、政府主導で強硬に法律を作ってしまわない限りは、民意からボトムアップでアクションを起こすことは非常に難しいと言えそうです。

ゲイに不寛容な法律

シンガポールでは、刑法で男性同士の性行為が禁止されています。法律上は2年以下の禁錮刑の可能性もある重罪です。ただし、政府の公式見解として、「ホモセクシャルは犯罪とされるべきものではないが……男女間の礼節を覆すような法律改正はすべきでない」と述べています。

【刑法377A】
「公的、または私的に、他の男性といかなる甚だしいわいせつ行為を行う、そのような行為を教唆する、他の男性によるそのような行為をあっせんする、またはあっせんしようとする男性は2年以下の禁錮に処す」などと定めた法律。英植民地の多くに制定され、旧宗主国の英国がこの法を撤廃した後も、シンガポールやマレーシアなどに残る。(朝日新聞GLOBE+より)

 犯罪じゃないなら法律直せよ!と思いますが、法改正にはイスラム系を筆頭に各宗教派閥からの反発必須なので、あえて手を出したくないのでしょう。今後、ここに手を付ける理由が政府に発生するとすれば、それがシンガポールの国家発展(≒経済発展)に対してとてもクリティカルな案件になったら・・・です。そもそも国家発展という大義名分の前に、個人の権利を自由に主張することが許されない国ですので(それが例え人権問題だとしても)そう簡単ではないでしょう。もともとマレーシアから独立した国で、イスラム教との文化的結びつきも強いですし、周辺国にも同性愛には不寛容な国家が多く、ハードルは相当に高そうです。

そんな表立って当事者が声を上げることが難しいシンガポールでありますが、少し前に話題になったシンガポール漫画家の「ゲイとして生きる難しさ」を表現した作品を紹介します。セクシャリティを公にして生活するシンガポール人は、日本のそれよりも更にもっと少ない印象です。そんな中、この漫画は、話題を呼びました。言語統制に抵触しないレベルで書かれた(と思われるトーン)に、その心の葛藤を感じることができます。

以上、#お国柄編でした。ここまで、シンガポールという国とそのお国柄について見てきました。じゃあ、そこで暮らすゲイの生活ってどういうものなの?っていうところを、次回の#暮らし編で一緒に考え行きたいと思います。

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